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矯正治療のやさしいお話(1月号)
一番最初にここのコラムを担当した時に、私自身が何故、矯正というものを選んだかという理由を書きました。それは、自分が出っ歯であって、それが嫌で嫌で仕方無かったという動機からだとお話したと思います。そして、同様の思いを抱いている患者さんに接する度に、少しでもその苦悩を取り除く事のできるこの職業に喜びを感じてきました。しかし、最近はそれだけではありません。数多くの患者さんを診ていて、歯並びがきれいになった事で、口腔全体の健康状態が飛躍的に良くなったと、つくづく思うようになりました。でこぼこを治す事で、患者さん自身の歯磨はやりやすくなりますし、歯石も付きにくくなります。また、歯を引っ込めて、唇が締まりやすくなったことも、歯周病にかかりにくい環境が作れた事にもなります。ですから、矯正治療によって、見た目の良さだけではなく、歯や歯周組織が健全な状態で維持しやすくなる環境が得られたと自負するようになりました。但し、このような結果を獲るには、私どもの矯正治療のみで達成されるものではなく、治療前の衛生士によるブラッシング指導や徹底的な歯のクリーニング、治療後のメンテナンス、そして何よりも患者さん自身の日々の適切なブラッシングが必要な事はいうまでもありません。
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矯正治療のやさしいお話(2月号)
さて、今日は25歳の女性の読者から、 「八重歯を治すのに、抜歯をせずに、矯正治療をしているが、他人から、何年かすると元に戻ると言われて、心配だ」というご質問を戴きましたので、それについてお答えしましょう。今迄、多分この話題についてはお話していなかったと思いますので、後戻りについて説明する良い機会だと思います。
矯正治療では、何らかの方法で歯に弱い力をかけて、骨を改造しながら、歯を動かしていくわけですが、その際、複雑に歯根を取り巻いている繊維も伸ばされたり、押し縮められたりしています。そのため、装置を外したままにしておきますと、今迄押さえ付けられていたこの繊維が、不安定な状態ならば、元の状態に戻ろうとして、望ましくない歯の後戻りが生じてしまう事があります。そのため、我々矯正医は、歯を動かすための装置を外した時にはたいてい、後戻りを防ぐために、歯を動かさないようにするための装置を使う事になります。この歯の位置を安定させる作業の事を「保定」といいますが、これには色々なタイプの装置があり、もともとの不正咬合の状態や、矯正医の好みによっても使うタイプが、異なりますので、主治医の指示に従って保定装置を装着する事が、後戻りを防ぐ重要なポイントとなります。 つづく
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矯正治療のやさしいお話(3月号)
前回、動かした歯は、後戻りを防ぐために、何らかの装置をはめておく必要があると言いました。問題はこの装置をどのくらいの期間使用しなくてはならないかということですが、初めの状態とか、治し方によっても異なります。いわゆるガタガタで、抜歯をして、約2年で綺麗になった症例を考えてみましょう。ブレースを撤去しますと、その瞬間から歯は元の状態へ戻ろうとします。ですから、すぐにリテーナと呼ばれる取り外しのできる後戻り防止装置をはめなくてはなりません。ある先生は、初めの半年は殆ど一日中、それを過ぎれば夜間だけ装着するように言うでしょう。また別の先生は、歯を動かすのに要した期間だけははめておきましょう、などとおっしゃるでしょう。要するに、長期間、つけていればいる程安定するということなのです。ただ、理屈でこのことは理解できても、折角、ブレースが外れた患者にとっては、この保定装置は、自分で取り外しができるといっても、精神的苦痛を与える物(私個人の体験で…)に他なりませんので、ついついサボりガチになります。ですから、保定に入るには、患者さんに保定の意味を十分に理解してもらうことも大切ですが、矯正医の方でも、少しでも患者さんの装着の負担が少なくなるように工夫をすることが大切だと思います。
また、これで治療が終了したわけではなく、定期的な観察が必要になります。動かした歯が戻っていないか、ブラッシングは正しくできているか、新たに歯石はついていないか等々のチェックが必要となりますが、来院の頻度はぐっと少なくなります。
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矯正治療のやさしいお話(4月号)
前回は、歯を動かす治療が終了して、ブレースを歯面から取ってしまったら、歯を良い位置に保つためにリテーナ(保定装置)をつけるという話をしました。しかし、折角、鬱陶しい(?)ブレースがとれたのに、取り外しのできる装置とはいえ、四六時中、装着するのは、つらいことです。ですから、私どもでは、学校や職場では装着せずに、家に居るときだけ使用するようなタイプのものをよく用います。
さて、このリテーナをはめてしまえば、矯正治療はすべて終了になるのでしょうか。答えは「いいえ」です。この後は、定期的な観察が必要になります。動かした歯が戻っていないか、ブラッシングは正しくできているか、新たに歯石はついていないか、歯肉の状態はどうか、等々のチェックが必要となりますが、来院の頻度はぐっと少なくなります。
この定期検診の際に、不幸にして、きちんと並んでいるはずの歯が、ずれたりしてますと、それは保定装置をサボっていた訳ですが、リテーナの装着を長時間指示します。それでもいい状態にならない場合には、本人の意思を確認して、部分的に再治療を行うこともあります。まあ、私のように目の悪いものが、眼鏡やコンタクトを使用するように、歯並びの悪かった人にとって、リテーナは必需品と考えて頂ければ良いのですが…。
http://www.cybersuds.co.jp/yasuda/
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矯正治療のやさしいお話(5月号)
さて、後戻りの話の続きとして、下顎前突の再発について、お話ししましょう。以前、下顎前突の成り立ちについてお話ししたことがありますが、噛み癖で下顎を前に突き出すようなタイプ、上の前歯が内側に、下の前歯が外へ向いたタイプ、下顎の骨自身が上顎に比べて大きすぎるようなタイプと大きく三つあると述べました。いずれも、小学校の低学年で治療することが多いのですが、前二つのタイプはもともと骨格の大きさには関係の無いものですから、その子が高校生や大人になっても、受け口の再発はまず見られません。しかし、三つ目の骨の大きさに関係する受け口は、下顎の骨がどれ程成長する潜在能力を持っているかで、学童期に治療をした後、現状維持できるか、あるいは、受け口が再発するか、決まってしまいます。ですから我々矯正医は、学童期に骨格的な受け口の患者さんの治療をすることで、少しでも骨格の成長パターンをいい方向に持っていこうと、患者さんと共に努力します。が、もし、我々の期待を裏切って、下顎が旺盛な前方への成長を示した場合には、成長の落ち着くのを待って、例えば、歯を間引いて、カムフラージュ治療を行うとか、場合によっては、下顎の骨を切って後ろへ下げる外科的矯正治療を視野に入れることになります。
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矯正治療のやさしいお話(9月号)
「人は顔じゃないよ、心だよ。」というフレーズは幾度となく聞かされてきたものです。十分に理解はできても、どこか、釈然としないものがあると思います。というのは、現実の社会では「心」だけで通用しないということを多くの人が知っているからです。
マンガでも、余り賢くない人は出っ歯で登場するように、容貌を醜くするような不正咬合はマイナスのイメージを社会に与えます。ということは、そのような顔の子は、学校の先生からも、余りできないのじゃないかと誤解もされるでしょうし、就職活動や恋愛にも影響があるかもしれません。
このように、重度の不正咬合は、社会的なハンディキャップになっているということが容易に想像できますが、実際、多くの研究から事実であることが証明されています。
人間の体の中で顔は、常時、露出している部分です。ですから、その人間そのものを代表して雄弁に物語っている部分といっても過言ではありません。その顔つきに、ある種の不正咬合が影響しているわけです。
このように不正咬合がもたらす不利益を考えると、意外に深刻であることがありますが、一方、重篤な不正咬合であっても関心の無い人は、それはそれで、いいんじゃないかとも思っています。
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矯正治療のやさしいお話(10月号)
先日、「四年生なんですけど、どれくらいかかりますか?」という電話を頂戴しました。期間のことなのか、料金のことなのか、電話に出た衛生士は一瞬困った様でしたが、先ず、どういうことを気にされているかを尋ね、歯並びがガタガタしているということだと伺った上で、「では、一度、お口の中の状態を拝見してからでないと、詳しいお話ができませんので、御相談の御予約をとらせて下さい。」と返答致しました。そうなのです。電話のやり取りでは、患者さんがどんなにうまく不正咬合を表現されたとしても、こちらが想像するイメージとかけ離れることが少なからずあります。やはり、『百聞は一見に如かず』なのです。中には治療の必要もない場合もありますし、この患者さんの場合では、診ましたところ、ガタガタはあったのですが、それよりも、上顎と下顎のアンバランスがあり、成長期に下顎の成長を促進してあげることが必要だと思いました。そして、問題点を指摘し、それを改善するための方法、期間、料金等を説明し、治療するしないは、即断せずに、本人とお父様ともよく相談してもらう事として、その日はお帰り頂きました。四、五日して、この子の検査の予約を頂きましたが、このように、聞くと見るとは大違いということがよくありますので、専門医に見せるということが大事だと思います。
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矯正治療のやさしいお話(11月号)
さて、皆さんは8020運動をご存知でしょうか。80歳で自分の歯を20本残そうというものですが、これは高齢化を迎えるにあたって、健やかな生活を営むために極めて重要な事です。しかし、それを達成するのはかなり困難なようです。
私どもは、よく、「おばあさんやおじいさんの八重歯をご覧になった事がありますか。」というのですが、八重歯の多くは年齢を重ねるとともに、歯周病で抜かれてしまう事が多いようです。このように歯が入り組んで生えていると、どうしてもプラーク(歯垢)が付きやすくなり、歯周病に罹患し易くなるわけです。また、この八重歯になっている犬歯という歯は、前歯と奥歯の中間にあり、良好な噛み合わせを作る要となる役割をしています。その歯が本来あるべき位置になくて、機能していないと、健康な口腔機能を維持する事が困難になる事もあります。
矯正治療には見た目の改善だけでなく、歯を磨きやすくする、本来持っている歯の機能を回復するという目的があります。磨き易い歯並びと良好な噛み合わせ、これが8020達成者のキーになっているわけです。そのような意味で、若いうちの矯正治療というものが、将来の口腔の健康に対する基礎工事のような役割を果たしていると思います。
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矯正治療のやさしいお話(12月号)
私どもの所にみえた患者さんの歯肉炎の状態に関する統計をとりましたところ、どの年齢層でも歯肉炎(歯茎の炎症)が半数以上に認められました。一方、歯肉炎より重篤な歯周炎(歯を支えている骨にまでダメージが及んでいる)は、18歳以上の患者さんの25%に認められました。もっとも、この歯周炎がかなり進行していると、矯正治療もできませんので、歯周病の造詣の深い先生のところへ紹介するということになりますが…。
さて、この歯周病を見過ごしたまま矯正治療を行ったとしたらどうなるでしょう。以前、歯が動く仕組みを説明しました時に、歯の周りの骨を壊しては新しく造り、壊しては造りで、歯が動くとお話ししましたが、歯の根の周りに歯周病の原因である歯石を付けたままで力をかけますと、造るよりも壊れる量の方が多くなり、結果として歯周病を助長してしまいます。前回、歯周病の予防的な手段として矯正治療は意義のあることだと述べましたが、これを真実のものとするためには、矯正治療に先立って、歯周病のケアをしなくてはなりません。事実、私どもでは、ブラッシング指導とともに、中高生の1/7に、成人患者の約6割に、初期歯周治療を施しています。もちろん、矯正治療後のケアも大切なことはいうまでもありません。
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